下田にある「海女小屋」の女将、つぐ代さんはお姉さんの作る、おまんじゅうの美味しさを話してくれた。
「峰温泉の消防署のとなりだから」と、聞き、車を走らせた。
行って見ると、店らしきものはなく、「ふるさとまんじゅう」と書かれた小さな看板が一つ。
(その看板も、よく見ていなければ見落としてしまいそう。)
河津に嫁いで37年。村串澄江さんは、今、とても、幸せだと言い切る。
「私ね、60才過ぎてから、よいご縁にたくさん恵まれて、人生楽しくて仕方がないの。」
60才を期に、以前から夢だった高校に通い始めた。
若い頃は貧しくて、進学はとても無理だった。
きょうだい達のために、働き、自分の人生なんて考えている余裕はなかった。
だから、学ぶことは、夢。夢かなって、念願の女子高校生となったのである。
定時制高校は、通信制と定時制で勉強し、なんと3年で卒業してしまう。
もちろん、すんなりと卒業できたわけではない。若い頃とは、記憶力が違う。みんなが1度で覚えられることでも、3倍はかかる。だから、みんなの何倍も勉強した。
その3年間は学問は勿論、たくさんの人との出会いも与えてくれた。
「若い人たちに囲まれていると、自分もどんどん若返っていくのよ。」
そして、今、京都の大学の通信制で学んでいる。
「京都はね、立派な学者さんや、知識のある人たちとのご縁が出来るの。
みなさん、私の話がおもしろいらしいの。私みたいな人間、学問一筋の人たちには珍しいみたいね。」
確かに、村串さんの話はおもしろく、また、胸にぐっと来る。泣けても来る。
先日、近くの高校に呼ばれて話をした。特別なことではなく、ただ、彼女の人生や、気持を素直に語って聞かせた。
初めは、騒々しかった教室も、彼女の一声で静かになり、生徒達は黙って聞いた。
「今まで、こんなに自分達のことを考えてくれている大人に会った事がありません。」
「挨拶をするってすがすがしいことなんですね。挨拶って大事なことなんですね。」
と、学生達は感想を書いた。
|